早起き早寝朝ご飯

都築健永先生

今どきの夜型社会は子どもの脳をだめにする
 私が子どもの頃、毎日8時には寝たものでした。テレビも今ほどおもしろい番組はやっていなかったし、今ほど楽しい遊びがなくて、自然といえば自然だったかもしれません。いつ頃からか、「子どもを夜の9時頃に居酒屋へ連れて来てご飯を食べさせている親がいる」などということが、眉をしかめて話されるようになったと思ったら、今時はそれが珍しくもない光景になってしまいました。親の仕事も夜遅くまでかかることが増え、父と子の関わりを平日にと思ったら、10時過ぎに一緒に風呂に入ることを日課にして、子どもも楽しみに待っているなどという、善意の夜更かしも増えました。しかし、この夜更かしは、発達期の脳をだめにします。世界中で最も日本が進んでいる最悪生活リズムになっています。その仕組みについて説明します。
 人の体内時計では1日が25時間になっています。これは、地球の自転を基準にした1日24時間とずれるため、どこかで1時間リセットすると、ちょうど良くなります。人間にはそのための仕組みが備わっています。何をしたらよいかというと、朝6時に起きて外の光を見ることです。7時ではもうリセットは働きません。6時と外の光が大切です。このリセット後、脳内ではセロトニンという脳内ホルモンがたくさん出ます。すると、集中力が増し、イライラしにくくなり、姿勢が良くなります。そして、朝のリセットから14時間から16時間後、セロトニンはメラトニンという物質に変わります。メラトニンの代表的な作用は睡眠作用です。だから、子どもは朝の6時から数えて14時間後の夜の8時になると、暗くすれば、コトンと寝ます。さらに好都合なことに、寝ている間に昼間の体験の記憶が整理され、賢くなります。このことについては、あとで詳しく述べます。
 多くの家庭で、子どもを早く寝かそうと努力し、でも結局なかなか寝てくれなくて11時くらいになってしまい、朝は、夕べ遅かったからできるだけゆっくり寝かせてあげようと、幼稚園、保育園、学校などの始まるぎりぎりまで寝かせておく、こんなことがよくあると思います。親心はわかりますが、この寝坊させてあげる愛情が、逆効果で、その夜は再びなかなか寝ないとい結果を生みます。悪循環です。万年時差ぼけ状態になり、セロトニンが分泌されませんから、集中力のない、イライラしやすい、ダラダラした子どもになります。メラトニンも分泌されませんから夜もなかなか寝付かれないし、浅い、質の悪い睡眠になります。学習の定着も悪くなり、ついでに、夜更かしは肥満につながります。
 まず、朝起きから始めましょう。前の晩の寝た時間にかかわらず、朝の6時に起こすのです。そして、外で深呼吸、ついでに、散歩や縄跳び、ジョギングをしたらすばらしいです。すると、たっぷりセロトニンが分泌されますから、非常にすっきりした精神状態で、昼間の活動に、機嫌良く、集中して取り組むことができます。そして、夜は小学校3年生までは8時、4年から6年だったら9時には布団に入れ、明かりを消します。すっと寝ていくはずです。幼児は、1週間でこのリズムがつきます。1年生から3年生は1ヶ月で、4年生から6年生だと機嫌良く起きてくるのに3ヶ月くらいかかります。今、寝坊しているお父さんお母さん、大人は1年くらいは眠いですががんばってください。賢い良い子を育てるためです。6時起きで、すっきり目覚めると、今まであまり食べなかった朝ご飯をたっぷり食べるようになります。これで、一日の活動準備完了です。幼児の子育てでは、ぐずりが少なくなり、早く寝てくれるようになりますから、とても楽になります。



よく噛むことは良いことずくめ
そして、朝ご飯では次のようなことに気を付けると良いですね。
 まず、内容ですが、日本古来の「まごわやさしい」を踏襲したものが一番良いことが世界的に認められています。つまり、「ま(豆類)、ごま、わ(わかめ、海草類)、や(やさい)、し(しいたけ、きのこ類)い(芋)」です。炭水化物、脂質、タンパク質という3大栄養素をとることは、今の豊かな日本ではそれほど考えなくても難しいことではありません。しかし、これら、3大栄養素を吸収、活用していくために、ビタミン、ミネラルが決定的に大切です。これらが不足しがちなのが現代人の生活です。これらを補給するのに、「まごわやさしい」を意識するととても簡単です。また、洋食よりも、和食の方が、これらの食材をいろいろと入れるのには都合がよいです。みそ汁の具に3種類くらいは入れられますね。DHA、EPAが豊富な魚も和食の方が入れやすい。忙しい朝ですが、朝6時起きをすれば、結構ゆったりと食べられるものです。
 次に重要なのが食べ方です。日本の家庭では、昔は「よく噛んで食べなさい」という躾がされました。ところが、最近、この言葉、聞かれることが減りました。言われるのは「早く食べなさい」です。早く食べるということで、3から5回も噛むと飲み込める大きさになりますから、それで飲み込んでしまう。いつの間にかこんな食べ方が当たり前になってきています。弥生時代は、1食につき、14000回、噛んでいたそうです。戦前で1400回、今は600回だそうです。こんなにも減ってしまいました。
 よく噛むことは、満腹感との関係、消化吸収との関係、セロトニンの分泌との関係、虫歯との関係、学習との関係、カルシウムとの吸収との関係など、いろいろな意味で、重要であることがわかってきています。
 満腹感は、噛む回数と血糖値の上昇によって脳が感じますから、噛む回数が少ない食べ方だと、噛むことによる満腹感が感じられませんから、食べ過ぎになり、肥満につながります。肥満児に一口30噛みを実施しただけで、やせたという実験結果もあります。
 また、食品というのは、基本的に人体にとって異物ですから、唾液でくるんでこそ、消化吸収の対象になります。つまり、噛まずに飲みこむと、どんなにバランスのよい食材を口に入れても、実際には吸収が悪いというわけです。よく噛めば、セロトニンの分泌もたくさんになり、心が健康になります。虫歯になりにくくする唾液の作用が発揮される、学習成績がよくなる(実験で確かめられています)、カルシウムの吸収が良くなるなど噛むことの効用は良いことばかりです。とにかくよく噛みましょう。近年、噛まないことによる顎の退化などという事も言われています。退化した顎は、頭痛、肩こり、無気力などの症状を作り出すということです。そんなことにならないよう、十分に噛むことを習慣化させましょう。モンゴル高原で馬を追って暮らす人々は、今でも歯磨きの習慣がないそうです。その代わり、一食につき1000~2000回くらいは噛んでいるようですね。
 今どきの日本食は柔らかいものが多いですからとてもそんなにも噛めません。私は、一口30噛みと堅いするめのおやつを推奨しています。


よく眠る子は頭がよくなる
 人は人生の3分の1を眠ると言われていますが、夜型社会が進んで、最近では、8時間寝ている人は少ないような気もします。今日は、その睡眠について少しお話しします。
 睡眠には2種類あります。一つは、レム睡眠と言い、もう一つはノンレム睡眠と言います。レム睡眠のレムは、rapid eye movementの略ですが、これは、「眼球の素早い動き」と言う意味で、要するに、寝てはいるけど、目玉が動いている、つまり、夢を見ている睡眠です。もう一つの、ノンレム睡眠は、レムがノンですから、目玉が動いていない睡眠です。幼児期には、半分ほどがレム睡眠(つまり、10時間寝たら5時間夢を見ている)だそうですが、成長と共にどんどん減っていき、大人になると、レム睡眠は、睡眠時間の5分の1程度になると言います。
 さて、このレム睡眠には、まだ謎がありますが、有力な説として言われているのが次のようなことです。夢を見ているとは言ってきたけれど、実は、昼間の出来事をすべて再生して、記憶の整理をしているのではないかというのです。つまり、昼間の生活で起こったことや学習したことをきちんと記憶として定着させる作業は、夜、眠っている間に行われるということなのです。この記憶の整理の作業は、常に何らかの刺激にさらされている起きている間にはできないのです。だから、夜、外界からの刺激がない間にする。ネズミを用いた実験では、ネズミから、レム睡眠を奪うと、知能の発達が遅れるという結果も出ています。人間で言えば、乳児期に言葉が増えるのも、言葉を学習できればこそですから、学習-記憶という作業をしている夜間のレム睡眠を奪われたら、知能の発達が遅れるということは、容易に想像できることです。受験のためと、夜の11時まで塾に行って、12時過ぎに寝て、朝7時とか7時半に起きてという生活は、せっかく塾へ行っても、睡眠中にそれを定着でいきない、つまりは、努力とお金を無駄にする睡眠の取り方なのです。
 だから、我が子に、賢い子どもになってもらおうと思えば、レム睡眠とノンレム睡眠が規則正しく繰り返すような睡眠をとらせることが、とにかく大切なことになってくるんです。そのような睡眠をとるためにはどうすればよいか、というと、寝る時間、起きる時間が決まってくるのです。朝6時起床、太陽の光をしっかりと浴び、夜8時(小学校高学年なら9時、中学生なら10時)に就床という生活リズムが、このサイクルが間違いなく起こる睡眠の取り方なのです。夜更かし朝寝坊をしていると、睡眠時間が足りたとしても、学習を定着させる作業がうまくできない睡眠になります。今の日本ほど、子どもが朝寝坊夜更かしをしている国は、ありません。日本も、つい30年前には、子どもはもっと早く寝ていたのです。つい、うっかり、幼児期から10時過ぎに眠らせるのが平気な社会になってしまいました。今からでも遅くはありません。人間本来の「日が出たら起き、日が沈んだら寝る」にできるだけ近い生活にもどして、賢い子どもに育てましょう。


 
3個のコメント
ID:28 2008年 2月 15日8:33 PM コメント者:リオ

早寝早起きはずっと注意されていたことですが
ちゃんと理由があるんですね。

極端な例えですが最近は深夜営業のお店で
小さい子供を連れている人がいてびっくりしてしまいます。
今回のコラムを是非読んで欲しいですね!

とはいえ今は、遅起き、遅寝、朝ごはんぬきの
生活を送っているので頭が痛いです。

これから近い将来親になる予定の自分としては
厳守は無理でしょうが、サイクルを見直して
可能な限り早起き早寝してみようかなと思います。

ID:27 2008年 2月 15日6:39 PM コメント者:るーるー

私もがーこさんと同じく、先生のコラムを読み、反省の気持ちでいっぱいです。良く考えてみると、自分は親にこういう風にそだてられたんだ、自分は幸せな親をもったな、とも 思いました。今、自分は反省すべき点ばかりですが、自分も親にしてもらったことだから、と 思えば、心がけだけでもできそうな気がします。
私にとっては、気づかずにいた大切なことを、知らせていただいた良い機会になりました。

ID:26 2008年 2月 15日4:50 PM コメント者:がーこ

全部読んで、そのとおりだと反省しました。すべて親の都合なんですよね。起きないのも寝ないのも努力と忍耐は必要ですね。
でも我が家は、私が仕事に出ると朝は6時おき、よるはどうがんばっても10時になってしまいます。フルタイム勤務の上核家族なので、夜7時過ぎに帰ってきて仕事の疲れや家事や子供の世話などでもういっぱいいっぱいです。
後ろ向きに考えてしまうのがいけないのでしょうが、頭の良い子にしたかったらこうしろと脅迫されているようにも感じました。そうしないと賢くならないんですか?と言う気持ちにもなりました。






お医者さんコラム

コメントができるようになりました!お客様のご意見、ご感想をお待ちしております。ただし、先生への質問はご遠慮ください


▲上へ戻る